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警備会社のデューデリジェンスで買い手は何を見るか|M&A仲介の現場で実際に確認されるポイント

M&A基礎知識
警備会社のデューデリジェンスで買い手は何を見るか|M&A仲介の現場で実際に確認されるポイント

デューデリジェンス(DD)とは何か

デューデリジェンス(Due Diligence、以下DD)とは、M&Aにおいて買い手が、売り手企業の実態を確認するために行う精密調査です。財務・法務・労務・事業の各分野について、リスクや問題点がないかを専門家が調査します。

DDを「粗探し」のように感じる方もいますが、実際にはそうではありません。DDの本質は、買い手が安心して買収を進めるための確認作業です。「問題を見つけて破談にする」ためではなく、「リスクを正しく把握し、適切な条件で合意する」ために行われます。

DDの結果は、最終的な買収価格や契約条件に反映されます。たとえば、DDで簿外債務が見つかれば価格の調整が入りますし、労務面のリスクがあれば表明保証(売り手による保証条項)が追加されることもあります。つまりDDは、売り手にとっても「適正に評価してもらうための機会」です。

警備会社のM&Aを専門とするSECURITY BRIDGEの仲介経験からも、DDに対して事前にきちんと準備している会社ほど買い手からの信頼を得やすく、結果として良い条件での成約につながる傾向があります。


一般的なDDの4つの分野

DDは通常、「財務」「法務」「労務」「事業」の4分野で行われ、買い手側が依頼する公認会計士・弁護士・社会保険労務士などの専門家がそれぞれ調査を担当します。

財務DD

過去3〜5年分の決算書、税務申告書、資金繰り表などをもとに、収益の実態や簿外債務の有無を確認します。中小企業では、役員報酬や経費の使い方が個人的なものと混在しているケースもあるため、「正常収益力」の算定がポイントになります。

法務DD

取引先との契約書(業務委託契約、リース契約、不動産賃貸借契約など)、訴訟・紛争の有無、知的財産の状況などを確認します。契約書が書面で存在しない場合、リスクとして指摘されることがあります。

労務DD

雇用契約の内容、未払残業代の有無、社会保険の加入状況、就業規則の整備状況などを確認します。人件費比率の高い警備業では、労務DDの比重が特に大きくなる傾向があります。

事業DD

売上構成、主要顧客との取引関係、市場環境、事業の成長性や持続性を確認します。警備業の場合は、契約の長期安定性や元請比率、隊員の充足状況なども事業DDの対象に含まれます。


警備会社のDDで特に確認されるポイント(業界固有)

一般的なDDの枠組みに加え、警備会社のM&Aでは業界固有のポイントが重点的に調査されます。ここでは、現場で実際に確認される場面を数多く見てきた項目を解説します。

1. 許認可の有効性と警備業法違反の有無

警備業認定が有効であるかどうかは、DDにおいて最初に確認される事項の一つです。過去に行政処分を受けていないか、届出内容に変更がないかなども確認されます。

株式譲渡であれば認定はそのまま維持されますが、届出事項に変更があれば適切に届出が行われている必要があります。許認可に関する不備は、買い手にとって事業の根幹に関わるリスクと捉えられるため、事前の確認が欠かせません。

→ 許認可の取り扱いについて詳しく知りたい方は「警備業のM&Aで許認可はどうなる?」もあわせてご覧ください。

2. 法定教育の実施記録と保存状況

警備業法では、警備員に対して新任教育(20時間以上)と現任教育(年度ごとに10時間以上)の実施が義務付けられています。DDでは、これらの教育が適切に実施され、記録が保存されているかが確認されます。

「教育はちゃんとやっているが、記録が残っていない」という警備会社は少なくありません。しかし、記録が不備の場合はコンプライアンスリスクとして指摘され、価格調整や条件追加の要因になることがあります。

3. 社会保険の加入状況

正社員・パート・アルバイトを問わず、加入義務のある隊員が適正に社会保険に加入しているかが確認されます。

未加入者がいる場合、遡及して保険料を精算するリスクが発生します。その金額が大きければ、売却価格から差し引かれる可能性もあります。警備業界では非正規雇用の隊員も多いため、この点は特に注意が必要です。

4. 未払残業代のリスク

長時間労働が常態化していないか、残業代の計算が適正に行われているかが確認されます。

警備業では変形労働時間制を採用しているケースが多くあります。制度の適用要件を満たしていない場合や計算方法が不適切な場合には、実質的な未払残業代が発生していると判断されることがあります。変形労働時間制の運用は、労務DDにおいて論点になりやすい項目の一つです。

5. 隊員の配置基準充足状況

法令で定められた配置基準を充足しているかどうかも確認されます。警備員指導教育責任者や機械警備業務管理者などの有資格者が適正に配置されているかが調査対象です。

人員が不足している場合、現在の受注を維持できるのか、今後の受注能力に問題はないかという観点で、事業の持続性に疑問を持たれることがあります。

6. キーマン依存度

特定の管理者や営業担当者に業務が集中していないかどうかは、買い手が特に注目するポイントです。

M&A仲介の現場では、「この人がいなくなったら現場が回らない」という状況がDDで明らかになるケースがあります。キーマンが退職した場合の事業継続リスクは、買い手にとって大きな懸念材料です。組織として業務が回る体制が構築されているかどうかが評価に影響します。

7. 元請/下請の契約関係と引継ぎリスク

主要取引先との契約内容、契約期間、更新条件が確認されます。警備業界では、長年の信頼関係をベースに口頭での合意で業務が継続しているケースもありますが、DDでは書面による契約の有無が問われます。

また、契約にチェンジオブコントロール条項(経営権が変わった場合に契約を解除できる条項)が含まれていないかも確認されます。この条項がある場合、M&A後に主要取引先を失うリスクが生じるため、事前に契約内容を精査しておくことが重要です。

SECURITY BRIDGEがM&A仲介をした事例でも、DDに向けた監査資料を事前にしっかり整理していた会社はスムーズにプロセスが進み、短期間で成約に至っています。SECURITY BRIDGEには業界特有の許認可・人材・契約構造に精通したアドバイザーが在籍しており、売り手がDD準備で見落としやすいポイントを事前に指摘できる点が、こうしたスムーズな成約を支えています。DDの準備は「やらされること」ではなく、「自社を正しく評価してもらうための投資」です。


DDで問題が見つかった場合にどうなるか

DDで問題が見つかっても、直ちにM&Aが中止になるわけではありません。多くの場合、価格調整や条件追加で対応されます。

価格調整

リスクを金額に換算し、売却価格から減額する方法です。たとえば、未払残業代のリスクが推定500万円であれば、その分を売却価格から差し引くといった対応が取られます。

表明保証

売り手が「この点について問題はない」と保証し、万が一成約後に問題が発覚した場合には売り手が賠償する、という条項を契約に盛り込む方法です。

条件追加

特定の問題を成約前(クロージング前)に解消することを条件として付すケースもあります。たとえば、社会保険の未加入者を成約までに加入させる、といった対応です。

破談

重大な法令違反や事業の根幹を揺るがす問題が見つかった場合には、M&A自体が中止になることもあります。ただし、これはあくまで例外的なケースです。

「DDで何か出てきたら終わりですか?」というご質問をいただくことがありますが、現実には問題が見つかった場合でも、価格調整や条件追加で折り合いをつけて成約に至るケースの方が多い印象です。重要なのは、問題を隠すのではなく、事前に把握し対策を講じておくことです。


DDをスムーズに通過するための事前準備チェックリスト

DDの準備は「調べられる前に自分で整えておく」ことが最も有効な対策です。以下は、売り手側が事前に確認・整理しておくべき主な項目です。すべてを完璧に揃えることが目的ではなく、「何が足りていて、何が足りていないか」を把握しておくことが大切です。

M&A仲介の現場で見てきた限り、DDがスムーズに進む会社には共通点があります。それは「DDのために特別なことをしている」のではなく、「日頃から適正な管理を行っている」ということです。逆に言えば、DDの準備をきっかけに社内管理を見直すことは、M&Aの成否にかかわらず経営の質を高めることにつながります。

→ 売却の全体プロセスを知りたい方は「警備会社売却の流れと期間」もあわせてご覧ください。


まとめ

デューデリジェンスは「粗探し」ではなく、買い手が安心して買収を進めるための確認作業であり、売り手にとっても適正に評価される機会です。警備会社のDDでは、一般的な財務・法務・労務・事業の4分野に加え、許認可・法定教育・社会保険・配置基準・契約構造など業界固有の項目が重点的に調査されます。

DDの準備は「調べられること」への対策ではなく、自社の管理体制を見直す好機です。早い段階から整備を進めておくことが、良い条件での成約につながります。

よくある質問

Q. DDは必ず実施されますか?
一般的には、ほぼすべてのM&Aにおいてデューデリジェンスは実施されます。規模の大小にかかわらず、買い手がリスクを把握するために必要なプロセスです。ただし、調査の範囲や深さは案件の規模や買い手の方針によって異なります。
Q. DD期間はどのくらいかかりますか?
通常4〜8週間程度です。ただし、資料の準備状況や確認すべき論点の数によって前後します。売り手側で資料を事前に整理しておくことで、期間を短縮できるケースも多くあります。実際にSECURITY BRIDGEがM&Aを仲介した事例でも、監査資料を事前に整理していた会社は、非常にスムーズにDDを通過しています。
Q. DDで問題が見つかったらM&Aは中止になりますか?
必ずしも中止にはなりません。多くの場合、価格調整や表明保証条項の追加、成約前の是正条件といった方法で対応されます。重大な法令違反など例外的なケースを除けば、問題が見つかったこと自体よりも、それに対してどのような対策が取れるかが重視されます。

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