警備業界M&Aコラム

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警備会社の廃業とM&Aはどちらを選ぶべきか|判断基準と従業員・取引先への影響

M&A基礎知識
警備会社の廃業とM&Aはどちらを選ぶべきか|判断基準と従業員・取引先への影響

警備会社の廃業を取り巻く現状

警備業を含む労働集約型業種で、人手不足を背景にした倒産・休廃業が増えています。しかし「廃業しかない」と思い込む前に、知っておくべき選択肢があります。

帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足倒産は427件に達し、3年連続で過去最多を更新しました。建設業・物流業・老人福祉事業など労働集約型の業種で増加が顕著であり、警備業も例外ではありません。同調査(2026年1月)では、メンテナンス・警備・検査業の正社員不足割合は67.4%に達しており、他業種が改善傾向にあるなかで逆に上昇しています。

一方、警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備業者数は約10,800社。そのうち約90%が警備員100人未満の小規模事業者です。採用力で大手に劣り、賃上げの原資も限られる中小警備会社ほど、経営が厳しくなる構造があります。

こうした環境下で「もう廃業するしかない」と感じる経営者が増えているのは無理もありません。しかし、廃業という判断を下す前に、M&Aという選択肢を知っておくことには大きな意味があります。従業員・取引先・経営者自身への影響が、廃業とM&Aではまったく異なるからです。


廃業した場合に何が起こるか

廃業を選んだ場合、従業員の解雇、取引先との契約終了、許認可の失効、清算費用の発生など、多方面に影響が及びます。経営者の負担も、廃業で自動的にゼロになるわけではありません。

従業員は全員解雇になる

廃業すると法人自体が消滅するため、従業員全員を解雇しなければなりません。隊員は自力で再就職先を探すことになります。長年一緒に働いてきた隊員を路頭に迷わせることへの罪悪感が、経営者にとって最大の心理的負担になるケースは少なくありません。

取引先との契約はすべて終了する

廃業にともない、元請けとの契約はすべて終了します。元請け側も代替の警備会社を探す必要が生じ、取引先にも少なからず負担がかかります。長年にわたって築いてきた信頼関係も、そこで途絶えることになります。

許認可は失効する

警備業認定は法人単位で付与されているため、法人が消滅すれば認定も失効します。認定を取得するまでに積み上げてきた実績や信用が失われるという点は、見落とされがちな影響のひとつです。

廃業にも費用がかかる

「会社を閉じればお金はかからない」と思われがちですが、実際には清算手続きにかかる費用、未払い賃金の精算、社会保険料の精算、事務所の原状回復費用など、廃業にも一定のコストが発生します。

連帯保証は自動的に解除されない

金融機関からの借入がある場合、廃業しても経営者の連帯保証が自動的に解除されるわけではありません。借入金の全額返済が完了するまで保証債務は残り続けます。会社を閉じたからといって経営者個人の負担がなくなるわけではない。これは見落とされやすい重要な事実です。


M&A(譲渡)を選んだ場合に何が変わるか

M&A(譲渡)を選択した場合、従業員の雇用・取引先との契約・許認可を維持したまま経営権を移転できる可能性があります。経営者にとっても、廃業とは大きく異なる選択肢です。

従業員の雇用は原則維持される

株式譲渡であれば法人格がそのまま存続するため、従業員の雇用契約も引き継がれます。買い手にとっても「人材を確保したいからこそ買収する」という動機があるため、隊員の離職を招くような対応をとることは合理的ではありません。

保安職種の有効求人倍率が6〜7倍台で推移する現在の市場環境では、「採用済みの人材をそのまま引き継げる」ことが買い手にとっての大きな価値です。雇用の維持は、売り手と買い手の双方にとって合理的な前提になっています。

取引先との契約も引き継がれる

株式譲渡の場合、法人格が変わらないため、元請けとの契約関係もそのまま継続します。クロージング後に経営体制の変更を丁寧に説明し、サービスの安定が維持されることを伝えれば、取引関係への影響を最小限に抑えられます。

許認可も法人ごと引き継がれる

株式譲渡であれば警備業認定は維持されます。役員変更届などの行政手続きは必要ですが、認定そのものを取り直す必要はありません。許認可事業である警備業にとって、この点は大きなメリットです。

→ 許認可の取り扱いについて詳しく知りたい方は「警備業のM&Aで許認可はどうなる?」もあわせてご覧ください。

経営者は創業者利潤を得られる

廃業では残余財産の分配しか受けられませんが、M&Aであれば株式の譲渡対価として創業者利潤を確保できます。税務上も、株式譲渡益課税(20.315%)が適用されるため、廃業時の清算課税と比較して手取り額に大きな差が出ることがあります。

連帯保証は解除されるケースが一般的

M&Aの成約時には、買い手が既存の借入を引き継ぐか、借り換えを行うことで、売り手経営者の連帯保証が全額解除されるのが一般的です。「これでゆっくり寝られる」——成約後の経営者から実際にいただいたことのある言葉です。

赤字でもM&Aが成立した事例

「赤字なのに売れるのか」と思われるかもしれませんが、実際にM&Aが成立するケースはあります。

ある地方の警備会社では、コロナ禍でイベント警備や施設警備の受注が激減し、赤字に陥っていました。他のM&A仲介会社には「赤字企業だから」と断られていたものの、警備会社M&Aを専門とするSECURITY BRIDGEでは「赤字であっても人的資産に価値がある」と判断。業界特有の許認可・人材・契約構造に精通したアドバイザーが隊員の定着率に着目し、同じ地域の警備会社グループへの譲渡が成立しました。従業員の雇用は維持されています。


廃業とM&Aの比較表

こうして並べてみると、多くの項目でM&A(譲渡)の方が関係者への影響が小さいことが分かります。もちろんすべてのケースでM&Aが最適とは限りませんが、廃業を決める前に比較検討する価値は十分にあります。


「赤字だから売れない」は本当か

警備業界では、財務上の赤字だけで「売れない」と判断するのは早計です。買い手が重視するのは「人」であり、隊員の人数・定着率・有資格者の在籍状況が評価のポイントになります。

「赤字の会社を買いたい企業なんてないでしょう」経営者の方からこう言われることがあります。一般的なM&Aであればそう感じるのも無理はありません。しかし、警備業界の実情は異なります。

警備業は「人がサービスそのもの」の労働集約型事業です。買い手が警備会社を買収する最大の動機は「人材の確保」であり、評価のポイントは以下のような要素に集中します。

隊員の人数と定着率(何人の隊員がいて、どれだけ辞めずに残っているか)、有資格者の在籍状況(警備員指導教育責任者、交通誘導2級など)、エリアカバレッジ(買い手がまだ進出していない地域の拠点になれるか)、元請けとの関係性(安定した取引先を持っているか)。こうした「人の資産」に価値を見出す買い手が、警備業界には存在します。

SECURITY BRIDGEが仲介した事例でも、3期連続赤字だった警備会社が、隊員の定着率と地域での元請け関係を評価され、約2ヶ月で成約に至ったケースがあります。SECURITY BRIDGEには業界特有の許認可・人材・契約構造に精通したアドバイザーが在籍しており、財務数値だけでは見えない企業価値を買い手に的確に伝えることで、こうした成約を実現しています。

「赤字だから売れない」と決めつけず、まずは警備業界に詳しいM&A仲介会社に相談してみることで、思いもよらない可能性が見えることがあります。


廃業を決める前に経営者がやるべきこと

廃業という判断を下す前に、「M&A」という選択肢を含めて情報を整理すること。それが、経営者としての最後の責任を果たすことにつながります。

警備業界に詳しいM&A仲介会社に相談する

M&Aは業界によって評価のポイントや買い手のニーズが大きく異なります。警備業界に精通したM&A仲介会社であれば、「自社に買い手がつく可能性があるかどうか」を現実的に判断できます。

自社の価値を客観的に把握する

「うちには価値がない」と思い込んでいる経営者は多いのですが、簡易的なバリュエーション(企業価値の概算)を行うと、自分では気づかなかった強みが見えてくることがあります。隊員の定着率、元請けとの契約関係、地域での実績など、日常的に「当たり前」だと思っていたことが、買い手にとっての魅力になるケースは珍しくありません。

廃業とM&Aを比較してから判断する

本記事で整理したように、廃業とM&Aでは従業員・取引先・経営者への影響が大きく異なります。感情的に「もう畳もう」と決めてしまう前に、両者を冷静に比較したうえで判断することをお勧めします。

検討段階での相談にリスクはない

「まだ決めていないのに相談していいのか」と躊躇される方がいますが、検討段階での相談は問題ありません。秘密厳守で対応しますし、相談したからといってM&Aを進めなければならないわけでもありません。むしろ、早い段階で情報を集めておくことが、後悔のない判断につながります。

「もっと早く相談すればよかった」経営者の方からそうおっしゃっていただくことは少なくありません。問題が深刻化してから動くと選択肢が狭まるというのが、実務上の率直な実感です。

→ M&Aの全体プロセスを知りたい方は「警備会社のM&Aの流れと期間」もあわせてご覧ください。


まとめ

廃業を選ぶと、従業員は全員解雇となり、取引先との契約も終了し、許認可も失効します。経営者の連帯保証も自動的には解除されません。一方、M&Aであれば、従業員の雇用・取引先との契約・許認可を維持したまま経営権を移転でき、経営者は創業者利潤を得て連帯保証も解除される可能性があります。

「廃業しかない」と決めつける前に、警備業界に詳しいM&A仲介会社に相談し、自社の価値を客観的に把握すること。それが、経営者としてできる最も重要な一歩です。

よくある質問

Q. 従業員が数名しかいない小さい会社でも譲渡できますか?
ケースによりますが、可能性はあります。警備業界では大手・中堅企業がエリア拡大や人員強化を目的に小規模な会社を譲り受けるM&Aが増えています。従業員数だけで判断せず、隊員の定着率や元請けとの契約関係など、会社の持つ強みを総合的に評価することが大切です。
Q. 譲渡にはどのくらい期間がかかりますか?
一般的に、初期相談からクロージングまで6〜10ヶ月が目安です。SECURITY BRIDGEの仲介実績では、約2ヶ月で成約に至ったケースもあります。売り手側の意思決定の早さや、必要資料の事前準備が、期間短縮のポイントになります。
Q. 廃業を考え始めてからでもM&Aに切り替えられますか?
可能です。廃業の手続きを本格的に進める前であれば、M&Aへの切り替えは十分に検討できます。ただし、隊員の退職が進んでしまってからでは会社の価値が低下するリスクがあるため、できるだけ早い段階でのご相談をお勧めします。

SECURITY BRIDGE

ご相談・資料請求について

警備業界のM&Aや事業承継は、会社の規模や地域、承継スキームなどによって最適な進め方が異なります。検討を始めたばかりの段階でも問題ありません。

『自社の場合はどう考えるべきか』『今すぐ動くべきか、それとも準備期間を設けるべきか』など、状況整理から丁寧にサポートいたします。

警備業界に特化したアドバイザーが、経営者の意思決定を中立的な立場でお手伝いします。


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