警備業界M&Aコラム

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地方の中小警備会社のM&A|都市部とは異なる論点と仲介会社への相談ポイント

M&A基礎知識
地方の中小警備会社のM&A|都市部とは異なる論点と仲介会社への相談ポイント

地方の警備会社を取り巻く環境

地方の警備会社は、採用難・入札依存・コスト上昇・後継者不在という複合的な課題に直面しており、単独での事業継続がますます困難になっています。

採用難の深刻化

警備業界全体で人手不足が続くなか、地方では労働力人口の減少などを背景に、人材確保が大きな課題となっています。帝国データバンクの調査(2026年1月)では、メンテナンス・警備・検査業の正社員不足割合は67.4%に達しており、全体の正社員不足割合が前年同月から低下するなか、「メンテナンス・警備・検査」は前年同月比で上昇しています。都市部であれば近隣エリアからの通勤者や他業種からの転職者を確保できる可能性がありますが、地方ではそもそも労働力の母数が限られており、採用の難易度が一段と高い状況です。

入札案件への依存度

地方の警備会社は、公共施設の警備や自治体発注の交通誘導など、入札案件への依存度が高い傾向があります。入札案件は安定した受注につながる一方で、落札できなかった場合の売上変動リスクがあり、価格面での競争も激しくなりがちです。

最低賃金の上昇と価格転嫁の困難さ

最低賃金は全国的に上昇を続けていますが、地方の警備会社では元請けや発注者への価格転嫁が難しいケースが少なくありません。警備業は人件費比率が高い労働集約型の事業であるため、コスト上昇分を吸収できなければ利益率が圧迫されます。M&A仲介の現場でも、「仕事はあるのに利益が出ない」という声を地方の経営者からいただくことは珍しくありません。

経営者の高齢化と後継者不在

警察庁「警備業の概況」(令和6年)によると、警備員の47.0%が60歳以上となっています。さらに、中小警備会社では経営者の高齢化や後継者不在も事業承継上の課題となっています。地方では親族内承継の候補がいないケースや、従業員承継を検討しても引き受ける人材がいないケースが多く、事業の継続方法としてM&Aを検討せざるを得ない状況が広がっています。


地方の警備会社がM&Aの対象になる理由

地方の警備会社は、エリアカバレッジの補完・地域密着の取引基盤・隊員の定着率という3つの観点から、買い手にとって明確な価値を持ちます。

エリアカバレッジの補完

買い手企業にとって、地方の警備会社を譲り受けることは「新たな地域への進出手段」として非常に合理的です。警備業界は単一または、少数の営業所で地域密着型の事業を展開する会社が多く、地方で営業基盤を持つ警備会社は、エリア拡大を目指す買い手にとって魅力的なM&A対象となり得ます。新規に営業所を開設して人材を採用するよりも、既存の会社を譲り受ける方がはるかに効率的だからです。

地域密着の元請け関係

地方の警備会社は、地元の公共施設や医療機関、建設会社との長年の取引関係を持っていることが多く、こうした元請けとの信頼関係は簡単に構築できるものではありません。公共案件の受注基盤や地元企業との継続的な取引は、買い手にとって非常に価値の高い「目に見えない資産」です。

隊員の定着率

弊社が地方の警備会社のご相談を受けるなかでは、長年勤務する隊員が多く在籍する会社も少なくありません。転職先の選択肢が限られるという事情もありますが、経営者と隊員の距離が近く、地域に根ざした雇用関係が築かれている会社も見られます。買い手にとって、定着率の高い人員体制を承継できることは、M&A後の事業安定性に直結する重要な評価ポイントです。

「小さいから売れない」は誤解

「うちのような小さな会社を買いたい企業があるのか」という質問をいただくことは多いのですが、警備業界のM&Aでは「規模の大小」よりも「エリアと人材にどれだけ価値があるか」が判断基準になります。警察庁のデータでも、100人未満の事業者が全体の約90%を占めています。業界全体が中小規模の事業者で構成されており、中小規模であることだけを理由に、M&Aの対象外になるわけではありません。


地方のM&Aで重視されるポイント

地方の警備会社のM&Aでは、財務数値だけでなく、地域での信頼関係・隊員の構成・有資格者・許認可、そしてPMI(買収後の統合プロセス)への適合性が重視されます。

地域での信頼関係・取引基盤

元請けとして直接契約している案件がどれだけあるか、主要な取引先との関係がどの程度安定しているかは、買い手が最も注目するポイントのひとつです。地方では取引関係が「人のつながり」で成り立っていることが多く、その関係性をM&A後も維持できるかどうかが重要になります。

隊員の人数・年齢構成・定着率

隊員が何名在籍しているか、年齢構成はどうか、離職率はどの程度かという情報は、企業価値の算定に直接的に影響します。警備業界全体で警備員の約47%が60歳以上という状況のなか、地方の警備会社では高齢化がさらに進んでいるケースもあります。年齢構成の実態を把握しておくことは、買い手との交渉においても重要です。

有資格者の比率

警備員指導教育責任者や交通誘導警備業務2級などの有資格者がどの程度在籍しているかは、事業の継続性を判断するうえで買い手が確認する要素です。地方の中小規模の会社では有資格者の数が限られているケースがありますが、だからこそ在籍していること自体が差別化要因になります。

許認可の状態

警備業認定は法人単位で付与されるため、株式譲渡であれば認定を維持したまま経営権を移転できます。許認可の状態が適正であることは、スムーズな成約の前提条件です。

地方ならではのPMI設計

地方では、通勤可能な範囲や勤務場所が隊員の就業継続に大きく影響するケースがあります。そのため、既存の勤務エリアや生活圏に配慮したPMI設計が、隊員の離職を防ぐうえで重要になります。


地方の中小警備会社でもM&Aは成立している

「地方だから」「小さいから」ではなく、「エリアと人材に価値があるかどうか」がM&A成否の判断基準です。

ある三重県の警備会社では、コロナ禍でイベント関連の警備が激減し、赤字が続いていました。しかし、厳しい経営環境のなかでも隊員の離職率が極めて低く、その「人としての資産価値」が評価され、同じ三重県内の警備会社グループへの譲渡が成立しました。成約までの期間は約2ヶ月です。赤字だから価値がないのではなく、隊員が定着している会社には財務諸表に表れない価値があるということを、この事例は示しています。

また、ある山口県の警備会社では、無借金・黒字経営を維持していましたが、従業員の高齢化と後継者不在という課題を抱えていました。「業績が安定しているうちに動かないと手遅れになる」という判断から、東京の上場企業グループへの譲渡を決断し、約2ヶ月で成約に至りました。地方の会社が都市部の上場企業の傘下に入ることで、経営基盤の強化と従業員の処遇改善が実現した事例です。

SECURITY BRIDGEには業界特有の許認可・人材・契約構造に精通したアドバイザーが在籍しており、地方の警備会社が持つ「目に見えにくい価値」を買い手に的確に伝えることで、こうした成約を支えています。仲介の現場で感じるのは、「地方だから」「小さいから」という理由で選択肢を閉じてしまうのはもったいない、ということです。買い手が見ているのは規模や立地ではなく、「そのエリアに根ざした事業基盤」と「そこで働いている隊員の価値」です。


地方の経営者がM&A仲介会社に相談するときのポイント

地方からの相談でもオンライン対応が可能な仲介会社は多く、検討段階であっても自社の価値を客観的に把握することが第一歩になります。

地方の案件にも対応しているかを確認する

M&A仲介会社のなかには、首都圏の案件を中心に扱っている会社もあります。地方の警備会社のM&Aを相談する場合は、地方の案件にも対応実績があるかどうかを確認しておくことが重要です。警備業界に特化した仲介会社であれば、地方の事業環境や隊員の特性を理解したうえでアドバイスを受けられます。

初回相談は無料のケースが多い

M&A仲介会社への初回相談は、無料で対応しているケースがほとんどです。「売却を決めていないのに相談してもよいのか」と躊躇される方もいますが、問題ありません。むしろ検討の初期段階で自社の客観的な価値を把握しておくことが、その後の判断に余裕を持たせることにつながります。

「まだ決めていない」段階でも相談してよい

「売却を決めてから相談するもの」と考えている経営者は多い印象ですが、実際には「まだ何も決めていないが、選択肢を整理したい」という段階での相談も歓迎されます。自社の価値を知ること、業界の動向を知ること、それだけでも今後の経営判断に役立つ情報が得られるはずです。

売却の全体プロセスを知りたい方は「警備会社売却の流れと期間」もあわせてご覧ください。


まとめ

地方の中小警備会社は、エリアカバレッジの補完・地域密着の取引基盤・隊員の定着率という観点から、買い手にとって明確な価値を持ちます。「地方だから売れない」は誤解です。

地方のM&Aでは、財務数値だけでなく地域での信頼関係・隊員の構成・有資格者・許認可が重視され、隊員の生活圏を守ることを前提としたPMI設計が求められます。地方からでもオンラインで仲介会社に相談が可能であり、「まだ決めていない」段階であっても自社の価値を客観的に把握することが、良い選択につながる第一歩です。

よくある質問

Q. 従業員が10人以下でも、M&Aの対象になりますか?
ケースによりますが、可能性はあります。警備業界では人材確保が最大の経営課題であり、たとえ少人数であっても、隊員が定着しており、地域に根ざした取引基盤を持っている会社であれば、買い手から関心を持たれることがあります。SECURITY BRIDGEがM&Aを仲介した事例でも、従業員30名未満の警備会社が約2ヶ月で成約に至ったケースがあります。
Q. 買い手は都市部の大手企業が中心ですか?
必ずしもそうではありません。同じ地域の同業他社が買い手となるケースもあります。実際に、三重県の警備会社が同じ三重県の警備グループに譲渡された事例もあり、地域内での統合は買い手・売り手双方にとってメリットが大きい場合があります。一方で、エリア拡大を目指す都市部の中堅・大手企業が地方の会社を譲り受けるケースも増えています。
Q. 地方からでもM&A仲介会社に相談できますか?
できます。現在はオンラインでの初回面談に対応している仲介会社が多く、地方にいながらでも相談を始められます。SECURITY BRIDGEでも、初回のご相談からオンラインで対応しています。まずは気軽にお問い合わせいただければ、自社の状況に合わせた情報提供が可能です。

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