
警備業界M&Aコラム
COLUMN
異業種が警備会社を買収する理由とは?買い手の特徴とM&Aマッチングの実情
警備会社を買収する企業の5つのパターン
警備会社の買い手は同業だけではありません。ビルメンテナンス、物流、IT、人材サービスなど、異業種からの買収ニーズが広がっています。M&A仲介の実務で日常的に接する買い手候補を整理すると、大きく5つのパターンに分類できます。
1. 同業の大手・中堅警備会社
弊社が日常的に接する買い手候補の中でも、特に多いのが同業の警備会社です。エリア拡大、人員確保、契約基盤の取り込みを目的に、近隣地域の中小警備会社を譲り受けるケースが増えています。大手が中堅・中小を取り込む動きは加速しています。
2. ビルメンテナンス・設備管理会社
施設の清掃・設備管理と警備を一括で提供する「ワンストップ型の施設管理」を実現するために、警備会社を買収するパターンです。顧客である施設オーナーにとって、窓口が一つで施設管理を任せられる体制は大きな魅力です。ビルメンテナンス会社が警備会社を買収して自社のサービスラインを補完する動きが見られます。
3. 人材サービス会社
採用や人材管理に強みを持つ人材サービス会社が、事業領域の拡大を目的として警備会社を買収するケースです。警備業は人材確保が事業成長を左右するため、採用・定着・労務管理などのノウハウとの親和性が期待されます。
4. IT・テクノロジー企業
AI・IoT技術と警備業の融合を目指す買い手です。遠隔監視やセンサー技術を持つ企業が、人的警備の現場ネットワークと組み合わせることで「DX×警備」のサービスモデルを構築しようとするケースが注目されています。テクノロジーだけでは対応できない領域に、警備会社が持つ「人」と「現場」の力が求められています。
5. 物流・建設関連企業
物流拠点や建設現場での警備ニーズを社内に取り込み、コストの最適化やサービスの一体化を図るパターンです。2025年7月には、物流大手のセンコーグループホールディングスが東宝総合警備保障を子会社化しており、物流と警備のシナジーを追求する動きが具体化しています。
なぜ異業種が警備会社を買うのか
異業種の買い手は、人材確保・ワンストップサービス・DXシナジー・安定収益といった複合的な動機から、警備会社の買収に踏み切っています。
人材確保の手段として
警備部門を一から立ち上げようとすれば、許認可の取得、隊員の採用、法定教育の実施、現場管理体制の構築と、膨大な時間とコストがかかります。帝国データバンクの調査(2026年1月)によると、メンテナンス・警備・検査業の正社員不足割合は67.4%に達しており、人材確保が依然として大きな課題となっています。特に株式譲渡では、既存の警備員や組織体制を維持したまま事業を承継しやすい点も、買い手にとって大きな価値になります。
ワンストップサービスの実現
施設管理の現場では、清掃・設備管理・警備を一括で提供できる体制への需要が高まっています。これまで別々の会社に発注していたサービスを一つのグループで完結させることで、顧客の利便性が上がり、取引の深耕や新たな受注につながる可能性があります。
DXとのシナジー
AI監視カメラやIoTセンサーといったテクノロジーは、それ単体では現場のすべてをカバーできません。技術を持つ企業が、警備会社の持つ人的サービスのネットワークと融合させることで、テクノロジーと人のハイブリッド型警備という新しいサービスモデルを構築する動きが出ています。
安定した収益基盤としての魅力
施設警備など継続契約を中心とする警備会社では、一定のストック性を持った収益基盤が形成されているケースがあります。長期にわたる取引先との契約や、元請け案件を多く持つ企業は、収益の継続性という観点から買い手に評価されやすい傾向があります。
最新事例:物流×警備のシナジー
2025年7月、物流大手のセンコーグループホールディングスが東宝総合警備保障およびネットセキュリティを子会社化しました。物流事業を中核とする企業グループが警備会社を傘下に加えた事例として、異業種と警備業の組み合わせが注目されます。
M&A仲介会社がマッチングで重視すること
仲介会社の役割は、単に買い手と売り手をつなぐことではありません。シナジーの見込める組み合わせを設計し、売り手の希望条件を満たす買い手を見つけることにあります。
業界ネットワークを活用した買い手候補の選定
警備会社のM&Aを専門とするSECURITY BRIDGEは、同業の買い手だけでなく、警備業に関心を持つ異業種の企業ともネットワークを築いています。業界特有の許認可・人材・契約構造に精通したアドバイザーが在籍しているからこそ、買い手に対して売り手の価値を的確に伝えることができ、幅広い買い手候補を確保することが売り手にとってより良い条件を引き出す交渉の余地を広げます。
シナジーの見込める組み合わせの設計
マッチングにおいて最も重要なのは、買い手と売り手の事業が「組み合わさったときに何が生まれるか」を具体的に描くことです。単に規模の大きい買い手を紹介するのではなく、シナジーの方向性まで含めて候補を選定します。
売り手の希望条件を反映した選定
「従業員の雇用を守りたい」「社名を残したい」「地域との関係を維持したい」経営者からこうしたご要望をいただくことは非常に多くあります。条件交渉の段階でこうした要望を実現するためにも、複数の買い手候補を確保しておくことが重要です。
売り手にとっての意味
買い手の幅が広いほど、売り手にとっての選択肢が広がります。「うちなんか」と思わず、まずは自社の価値を客観的に確認することが重要です。
条件交渉の選択肢が広がる
買い手候補が同業だけでなく異業種にも広がっているということは、売り手にとって交渉の選択肢が増えることを意味します。複数の候補と並行して交渉を進めることで、条件面で有利に進めやすくなります。
異業種の方が高い評価を提示するケースもある
異業種の買い手では、単独の収益力だけでなく、自社事業とのシナジーや新規事業への展開可能性を含めて評価され、同業の買い手とは異なる価格評価となる場合があります。たとえば、ワンストップ型の施設管理を実現したいビルメンテナンス会社にとっては、警備機能を加えること自体に戦略的な価値があるため、財務数値だけでは測れない評価が加わることがあります。
「うちなんか」と思わないでほしい
「うちのような小さな会社に買い手がつくのか」経営者からよく聞くご不安です。しかし実際には、従業員数が数十名規模でも引き合いがあるケースは珍しくありません。弊社が支援した事例でも、コロナ禍で赤字に陥っていた警備会社が「隊員がしっかり定着している」という点を評価され、同じ地域の同業他社グループに譲渡が成立しています。
自社の価値は、自分ひとりで判断するのではなく、M&A仲介会社に相談して客観的に確認してみることが最初の一歩です。
異業種の買い手との統合で注意すべきこと
異業種だからこそ、警備業の現場感覚や許認可制度への理解度を、PMI(買収後の統合プロセス)の段階で丁寧に確認する必要があります。
警備業の現場感覚に対する理解
警備業は現場ごとに状況が異なり、指令管制・シフト管理・隊員への教育など、独自のオペレーションが求められます。異業種の買い手がこうした現場の仕組みを十分に理解しないまま統合を進めると、現場に混乱が生じるおそれがあります。PMIの初期段階で、買い手側に警備業の現場実務を共有する場を設けることが重要です。
隊員のアイデンティティへの配慮
隊員の中には、「警備の仕事に誇りを持って働いている」という方が少なくありません。異業種の傘下に入ることで「自分たちの仕事が軽視されるのではないか」という不安が生まれることがあります。統合後も警備部門としての独立性を尊重し、隊員に対して丁寧に方針を説明することが離職防止につながります。
許認可・法定教育制度への対応
警備業には、警備員指導教育責任者の選任や法定教育など、警備業法に基づく各種要件があります。株式譲渡では原則として警備業の認定は維持されますが、買い手側にも制度を正しく理解し、買収後も適切に運用できる体制づくりが求められます。
M&A仲介会社のサポート
異業種との統合で特有のリスクが生じうることは、M&A仲介会社として交渉段階から想定しておくべきテーマです。マッチングの段階で「この買い手は警備業の現場をどこまで理解しているか」を見極めておくことが、PMI段階でのトラブルを防ぐ大きなポイントになります。
→ PMIの進め方について詳しく知りたい方は「警備会社M&A後のPMIで隊員の離職を防ぐには」もあわせてご覧ください。
まとめ
警備会社の買い手は同業だけではなく、ビルメンテナンス・物流・IT・人材サービスなど異業種からの買収ニーズが拡大しています。異業種が警備会社を買う理由は、人材確保・ワンストップサービス・DXシナジー・安定収益基盤など多岐にわたります。
買い手の幅が広いほど売り手の選択肢は広がります。「うちなんか」と決めつけず、まずはM&A仲介会社に自社の価値を確認することが、良い条件での成約への第一歩です。
よくある質問
- Q. 異業種の買い手でも警備業の許認可は大丈夫ですか?
- 株式譲渡であれば、警備業の認定を受けている法人自体は変わらないため、原則として認定は維持されます。ただし、M&Aに伴って役員が変更される場合には、新任役員が警備業法上の欠格事由に該当しないことなどの確認が必要です。事業譲渡の場合は、譲受会社側で新たに認定が必要となる場合があるため、スキームの選択には注意が必要です。
- Q. 異業種の買い手は警備の現場を理解してくれるのでしょうか?
- PMI(買収後の統合プロセス)の設計次第です。異業種だからこそ、統合初期に警備業の現場実務を共有し、相互理解を深める場を設けることが重要です。M&A仲介会社がマッチングの段階で「買い手の理解度」を見極めておくことで、統合後のリスクを軽減できます。
- Q. 自社に合った買い手がいるかどうか、事前に分かりますか?
- M&A仲介会社に相談すれば、会社の事業内容やエリア、強みをもとに、想定される買い手候補のイメージを共有してもらうことが可能です。具体的な企業名はNDA(秘密保持契約)を締結してからの開示になりますが、「どのような業種・規模の買い手が関心を持ちそうか」という方向性は、初回の相談段階でも確認できます。
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『自社の場合はどう考えるべきか』『今すぐ動くべきか、それとも準備期間を設けるべきか』など、状況整理から丁寧にサポートいたします。
警備業界に特化したアドバイザーが、経営者の意思決定を中立的な立場でお手伝いします。
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