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「赤字でも『人』という資産価値がある」家族同然の従業員たちを評価してくれたその言葉が嬉しかった
赤字でも「人」が資産。警備業の(株)ポラリスが従業員を守るため選んだM&Aとは?SECURITY BRIDGEの支援で実現した成約事例をご紹介。
帰社後にはみんなでストーブを囲んで団欒……そんな従業員たちと家族のような会社経営を続けてきた株式会社ポラリス。人と人との繋がりを大切に一つひとつの案件に向き合ってきました。しかし新型コロナウイルスの流行を機に依頼が激減。さらに、コロナ禍が明けると今度はさまざまな業界の企業の警備業参入によって競争が激化。それでも「残ってくれた従業員とその家族の生活を守りたい」と模索した先に繋がったのがM&Aでした。

譲渡企業:株式会社ポラリス
エリア:三重県
事業内容:1号警備、2号警備、列車見張り
譲受企業:東海パトロール株式会社(サンエス警備保障グループ)
エリア:三重県
事業内容:1号警備、2号警備、列車見張り

私がなれるのは、身を削ってでも子を守ろうとする「ペンギン」のような経営者
ポラリスは、2005年の創業以来『「あたりまえ」のことを大切に』を理念として、地域のみなさまの架け橋を目指して事業を展開。交通誘導から列車見張、ショッピングモールなどの施設・巡回警備に、高校野球、大学駅伝をはじめとしたスポーツイベントなどあらゆるニーズに対応。また、地域のお祭り、花火大会、年末年始の神宮・神社警備なども手掛け、「サービス面」においても気配りのできるクオリティの高い警備を実現してきました。
創業したきっかけとは
私はもともと編集記者をはじめ、福祉ボランティアや進学塾の講師など、さまざまな業界を経験してきました。そこで知り合った多くの人とご縁がどんどん繋がる形で新会社の立ち上げに携わり、徐々に会社経営にも深く関わるようになっていったんです。そんなときに個人株主として出資していた警備会社から「会社が乗っ取られた」という話が飛び込んできたのが大きな転機になりました。しかし、私は警備業界は全くの未経験。お恥ずかしながら業界用語もわからない状態でした。それでも「従業員と取引先を助けてください。あなたしか頼めないんです」という声になんとか応えたいという思いから新たに会社を設立した、というのがポラリスのはじまりです。
ポラリスの強みは?
やはり強みは従業員たちとの絆ですね。私はオオカミやライオンのような経営者にはなれません。私にできるのは極寒の地で身を削ってでも子を守るペンギンのような経営者。そう考え、気持ちよく現場に出て安心して帰ってこられる居場所を作ることに注力しました。毎朝1人ひとりと握手をして「行ってらっしゃい」と送り出し、握り方で体調の変化がわかるほどでした。帰社後は「お疲れ様です。お帰りなさい。」と声をかけ、みんなでストーブを囲んで大鍋の豚汁やゆで卵を食べる、なんていうのもポラリスならではの風景だったかもしれません。なので人の出入りが激しく人手不足問題が叫ばれる警備業界にしては珍しく、自分から「転職したい」といって辞めていくメンバーはほとんどいませんでした。
ポラリスがこれまで大切にしてきたことは?
私が1番大切にしている言葉は「和を以て貴しとなす」です。従業員たちとの連携はもちろんですが、取引先様ともその点を重視してきました。直接私が現場に出ることで顔の見える関係性を心がけ、創業当初は「初心者マーク付きの社長です」と業界未経験だということも包み隠さずにお伝えしてご教示いただいたことも。しかし、そうしたやりとりを面白がってくださり、ご紹介いいただく案件もたくさんありました。そうして助けていただいたご恩に対して、こちらとしてもお声がけいただいたときにはできる限りお断りしないというモットーで経営を続けてきました。おかげさまで紹介先からも従業員たちの働きが評価され、営業活動をせずともご依頼が途切れない会社になったんです。
コロナ禍によって傾いた会社「もう私ではみんなを守ることができない」
従業員や取引先様との繋がりを大切にしながら順調に事業を展開していったポラリス。しかし、未知のウイルスによるパンデミックが大きく社会を変えてしまいます。密になるイベントは次々になくなり、人々は家の中にこもる生活に。警備の仕事はなくなり業績はみるみる悪化。それでも会社に残り続けた従業員たちを守る術を模索する日々。そこにSECURITY BRIDGEからの連絡が新しい縁を繋ぐきっかけになったのです。
会社を譲渡しようとしたきっかけとは?
2020年、新型コロナウイルスの流行によって状況が激変しました。それまで順調だったイベント関連の警備の仕事はもちろんなくなりましたし、ステイホームの時期に入ると施設警備の仕事も止まりました。それに伴って業績がどんどん悪化していったんです。それまで人のご縁で繋がってきた部分が希薄になっていったように思います。そしてコロナ禍と呼ばれる時期が過ぎると今度は、他業界から警備業に参入する企業が増えて競争が激化。大口で契約していた取引先様との案件も結果的に他社さんに奪われる形でなくなってしまいました。まるで「ここならいけるぞ」とターゲットになってしまったようにも感じるくらい、一気に顧客を奪われていったんです。そんな厳しい状況のなかでも辞めずに残ってくれた従業員たち。彼らとその家族たちの生活を守りたいという一心で、ちょっとでも仕事がいただけないかといろんなところへ駆け回りました。個人資産もすべて会社に投入してなんとか繋いでいましたが、どうにも状況は改善せず。「もう私ではみんなを守ることができない。誰かの力を借りなければ」と思い悩んでいたところに、いくつかのM&A仲介の会社さんからご連絡をいただきました。しかし、こんな赤字企業を繋いでくれるはずがないとすべてお断りしていたんです。そのなかでSECURITY BRIDGEさんからのご連絡をいただき、ハッとさせられるお言葉をかけてくださいました。
警備業界に特化したSECURITY BRIDGEだから、すぐに本音で相談できた
会社の窮地に際して次々と舞い込んできたM&A仲介会社によるアプローチ。そのなかで、まず従業員のことについて言及したのはSECURITY BRIDGEだけだったそう。警備業界に対する理解が深く、そして何よりも従業員を守りたいという気持ちに寄り添ってくれる。そんな「SECURITY BRIDGEなら!」と、初めて会おうという気持ちになったそう。そして帳簿も心境もすべてさらけ出して話すことができたと言います。
SECURITY BRIDGEとの出会い
SECURITY BRIDGEの榎本社長は警備会社のM&Aを多く手掛けられているということでしたし、すぐに状況を理解してくださったので、もう思わずぶっちゃけてしまったんです「うちは赤字企業。資産価値なんてない。それでもM&Aで繋いでくださるんですか?」って。そうしたら、「赤字であっても価値はあります。それは人の価値です」っておっしゃっていただけて、それが嬉しかったですね。うちの従業員のことを「従業員が資産」「価値はある」とおっしゃってくださった方は初めてでしたので。そう言ってくださる方なら、従業員たちを守りたいという私の思いに寄り添ってくれるはず。そう思い、お会いしてみようと決心しました。
マッチングから成約に至るまでの流れ
榎本社長とのやりとりは、本当にこちらのことを一生懸命考えてくださっているのが感じられるものでした。なので、こちらも帳簿をすべて出させていただきながら、思いの丈を伝えることができたと思っています。警備業と一言にいっても、その領域は1号から4号まで幅広いですから。今、ポラリスにいる従業員たちがこれまでの経験、実績を活かして、M&A後もスムーズに活躍できる、そんな企業様とのご縁があればいいなという私の想いも素直にご相談できました。そうした丁寧な意識のすり合わせがあったため、「ここならば!」とご紹介いただいた東海パトロール株式会社様とはトントン拍子に進み、2ヶ月も経たずにお話がまとまりました。
譲渡に至るまでの不安やSECURITY BRIDGEのサポートについて
今回ご縁を繋いでいただいたのはサンエス警備保障株式会社のグループ会社である東海パトロール株式会社様。ポラリスの所在地とも近く、代表の町田社長についても以前より存じておりました。そうした点も、かなりご配慮をいただいたご紹介だったと感じます。デューデリジェンスの必要資料提出や社内の見学、契約書の取り交わしなども安心して進めることができました。そのなかで印象的だったのは、従業員を守ることばかりに必死になるあまり、自分自身のことを後回しにしていた私に「社長の生活もありますから」と、一生懸命交渉していただいていたことです。私にも“シッポのついた”ふたりの男の子という家族がいるもので(笑)。この子たちのことまで考えてくれたことにも本当に感謝しています。
従業員たちを守るためのM&Aは、経営者として大事な選択肢のひとつ
M&Aが成立後も、ポラリスでは「いってらっしゃい」「おかえり」が聞こえるアットホームな会社の雰囲気は変わらずに続いているそうです。社長として身を削ってでも従業員を守ろうとまさにペンギン経営者を全うした日々。そのときには、意識しないとでなかった笑顔が、今は自然と出せているそうです。ひとりで悩むことの多い経営者に向けて、M&Aを経験したからこそ伝えたいこととは?
M&Aを通じての感想
当然社内からはM&Aについて「突然言われても」と不安がる声もありました。ですが、働き方や条件面が大きく変わらないこと。加えて、みんなの生活が安定する決断ができて本当に良かったと私自身が納得している様子が、彼らを安心させたようです。ポラリスは今年20歳の誕生日を迎えます。この大きな節目に、良いご縁が結ばれて心底ホッとしています。私自身は今後、違う業界の仕事をしようかとも思ったのですが、これまでの経験を生かしてお力になれるのであればと、同じグループ会社でイチ従業員として働くことになりました。今までとは違う立場でまた「うちの子」と呼んできた従業員たちのこれからを見守ることができるのもありがたいなと思います。
M&Aを検討している経営者へのメッセージ
コロナ禍を経て状況が一変し、困っている経営者の方はたくさんいらっしゃると思います。私の経験を踏まえると、従業員たちを守るためのM&Aは経営者として素晴らしい判断の一つだということ。本当に力になっていただけるしっかりした方から差し伸べられた手は勇気を持ってすがってみてほしいです。たしかに会社の評価は業績です。お金です。でも、私にとっては頑張ってついてきてくれた従業員たちを評価してくれるSECURITY BRIDGEの榎本社長の「人が資産」という言葉が本当に嬉しかった。これから警備業界は生き残りをかけてとんでもない時代に入っていきます。力を集結させながらやっていこうという会社との縁がきっと繋がると思いますので、廃業するか否かとひとりで悩まず、まずは相談することをおすすめしたいです。
アットホームな会社を、大きなグループ会社を基盤に持つ同県内の会社へとお繋ぎいたしました
自らを自己犠牲を厭わないペンギン経営者とおっしゃていた田中社長。ご成約後「今度は自分をちょっと可愛がってあげたい」と言いつつ、まっさきにシッポのある家族に「お祝いのおやつを買いました」と嬉しそうに話す姿に心底人のために動かれる方なのだと感じました。そんな田中社長のように会社を守ろうと孤軍奮闘される経営者も少なくありません。「私自身もっと早く知りたかったし、今同じように悩まれている経営者の方々にぜひご紹介したい」ともおっしゃっていただけました。