
警備業界M&Aコラム
COLUMN
警備業界の再編はどこまで進むのか?中堅企業の経営者が知るべき最新動向
なぜ警備業界で再編が進んでいるのか
結論:人手不足の常態化、コスト上昇による収益圧迫、経営者の高齢化という3つの構造的要因が重なり、単独での事業継続が難しくなった中小警備会社が増えているため、再編が加速している。
要因1:人手不足の深刻化
警備業界の人手不足は、もはや一時的な問題ではなく構造的な課題です。
- 保安職種の有効求人倍率は2023年平均で7.31倍と、全業種平均(1.32倍)の約5.5倍に達した。2024年平均の全業種有効求人倍率は1.25倍にやや低下したものの、保安職種は引き続き6〜7倍台で推移しており、人手不足の深刻さは変わっていない(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」令和6年分)
- 帝国データバンクの調査(2026年1月)では、メンテナンス・警備・検査業の正社員人手不足割合は67.4%(前年同月比+0.9ポイント)で、建設(69.6%)、情報サービス(69.2%)に次ぐ水準にある。他業種が改善傾向にあるなかで逆に上昇しており、人手不足の構造的な深刻さを示している
- 生産年齢人口は2023年の約7,400万人から、2033年には6,900万人へ約500万人減少する見込み(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 令和5年推計」)
一方で、警備業者数は増加を続けており、2024年時点で10,811業者と過去最多を更新しています(2013年の9,133社から約18%増加)。警備員数も約58.8万人に達しましたが、需要に対して供給が追いついていない状況です(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。パイとなる労働力が縮小する中で業者数はむしろ増えており、採用力の弱い中小企業ほど人材を確保しにくくなっています。
なお、こうした人手不足は経営に直接的な影響を及ぼしています。東京商工リサーチの調査によると、2024年の警備業の倒産・休廃業・解散は合計138件と2000年以降の年間最多を更新しました。帝国データバンクの集計でも、2025年上半期(1〜6月)の警備業倒産は16件と前年同期から倍増し、過去最多ペースで推移しています。また、2025年の全業種の人手不足倒産は427件と3年連続で過去最多を更新し、年間で初めて400件を超えました(出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」)。賃上げに追いつけない小規模事業者を中心に事業継続を断念するケースが増えており、警備業も例外ではありません。
要因2:コスト上昇と単価交渉の限界
最低賃金の引き上げが続く中、警備業界では「コストは上がるのに、単価を上げにくい」という問題が根深くあります。
- 令和6年(2024年)の賃金構造基本統計調査によると、警備員の現金給与額は月額26.8万円で、全職種平均の33.0万円を大きく下回っている
- 所定内給与額の年間ベースで全業種平均との差は約21万円にのぼり、月間の平均労働時間は全業種平均より約5時間長い
- 令和7年度(2025年度)の建築保全業務労務単価では、警備員の全国平均単価は15,623円(前年度比8.2%増)と12年連続で引き上げられた。しかし、中堅以下の企業がこの水準を現場単価に転嫁できているかは別の問題である
(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」、国土交通省「令和7年度建築保全業務労務単価」)
待遇を改善しなければ隊員は集まらず、待遇を上げれば利益を圧迫する。元請けとの単価交渉が通りにくい中堅以下の企業にとって、この板挟みは年々厳しくなっています。私が経営者の方とお話しする中でも、「最低賃金が上がるたびに利益が削られる。交渉力がなければ持たない」という声は非常に多いです。
要因3:経営者の高齢化と後継者不在
警備業界に限った話ではありませんが、中小企業の経営者の平均年齢は上昇を続けています。親族内承継が難しく、従業員承継も「連帯保証を引き受けられる人がいない」という理由で進まないケースが少なくありません。
実際の支援では、業績が黒字でも「従業員の高齢化と人材不足」を理由に、70歳前後でM&Aを決断される経営者の方が増えています。ある地方の警備会社の経営者は、無借金・黒字経営にもかかわらず「今のうちに動かないと手遅れになる」と判断し、上場企業グループへの株式譲渡を選択されました。
> 私が現場で感じていること
> 「再編が進んでいるのは、業界全体の問題であると同時に、一社一社の経営判断の積み重ねでもあります。人が採れない、コストが上がる、後継者がいない──この3つが重なったとき、単独で踏ん張り続けることの難しさを、経営者の方ご自身が一番よく分かっておられます」
経営者が取りうる選択肢を整理する
結論:「現状維持」「自力成長」「M&A(譲渡・譲受)」の3つが主な選択肢であり、それぞれにメリットとリスクがある。自社の状況に合わせて冷静に比較することが重要。
選択肢1:現状維持(単独経営の継続)
- 向いている場合:後継者が育っている、採用が一定程度できている、財務基盤が安定している
- リスク:人手不足やコスト増の環境下で、競争力が徐々に低下する可能性がある。問題が顕在化してから動くと、選択肢が狭まる
選択肢2:自力成長(採用強化・新規開拓)
- 向いている場合:経営者に体力と意欲があり、投資余力がある
- リスク:採用コストの上昇が続く中で、投資が回収できない可能性がある。待遇改善に踏み切っても、大手との差を埋めきれないケースもある
選択肢3:M&A(譲渡または譲受)
- 向いている場合:グループの力を借りながら会社を発展させたい。従業員の将来を確保したい。後継者不在
- メリット:大手グループの資本力・ブランド・ノウハウを活用でき、隊員の待遇改善や採用力の強化が見込める。オーナーの連帯保証解除や創業者利潤の確保も可能
- 留意点:許認可の取り扱い、隊員の雇用継続、元請けとの契約維持など、警備業特有の論点を事前に整理する必要がある
警備業のM&Aでは、許認可(警備業認定)が法人単位で付与されているため、法人が存続する株式譲渡であれば認定をそのまま維持できます。一方、事業譲渡では許認可の再取得が必要になる場合があり、現場が止まるリスクがあります。スキームの選択は早い段階で検討しておくことが望ましいです。
選択肢比較表

「今動くべきか」を判断するためのチェックリスト
結論:以下のチェック項目に複数該当する場合は、資本戦略の見直しや専門家への相談を早めに検討する価値がある。

3つ以上該当する場合は、「今すぐ売る」という話ではなく、選択肢を整理するための情報収集を始める段階にあるかもしれません。検討段階で専門家に相談すること自体にリスクはありませんし、情報を持っておくことは経営判断の幅を広げることにつながります。
まとめ
- 警備業界の再編は、人手不足の常態化・コスト上昇・経営者の高齢化という構造的要因によって進んでおり、今後も加速する可能性が高い。
- 中堅規模の警備会社にとっても、採用競争の激化・単価交渉力の格差・取引先の評価基準の変化という形で影響が及んでいる。
- 経営者が取りうる選択肢は複数あるが、問題が顕在化する前に情報を集め、冷静に比較することが、後悔のない判断につながる。
よくある質問
- Q. 業績が好調でもM&Aを検討する意味はありますか?
- あります。業績が好調なタイミングの方が、買い手の選択肢が広がり、条件面でも有利になりやすい傾向があります。実際に私が支援した案件でも、無借金・黒字経営の警備会社が「今のうちに動かなければ手遅れになる」と判断し、上場企業グループへの譲渡を決断されたケースがあります。体力があるうちに動くことで、結果として従業員を守る選択肢が増えるという側面があります。
- Q. 再編が進んでも、中堅企業が単独で生き残る道はありますか?
- あります。特定エリアや特定業務区分で強みを持ち、安定した採用パイプラインと元請けとの信頼関係がある企業は、単独でも競争力を維持できる可能性があります。ただし、人手不足やコスト上昇の環境は全社に共通するため、自社の状況を定期的に点検し、必要に応じて戦略を見直すことは重要です。
- Q. M&Aの情報収集だけでも相談できますか?
- 可能です。SECURITY BRIDGEでは、検討初期段階のご相談も受け付けています。「今すぐ売りたい」というお話ではなく、「自社の選択肢を整理したい」「業界の動向を聞きたい」という段階でも、警備業界に特化した立場から情報提供ができます。
- Q. 再編の中で自社が「買う側」に回ることは可能ですか?
- 可能です。採用難を補うために近隣の小規模警備会社を譲受し、人員基盤を強化するというM&Aも増えています。譲受にあたっては、許認可の統合、隊員の労務管理の統一、指令系統の整備など、警備業特有のPMI(買収後の統合プロセス)を事前に設計しておくことが重要です。
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警備業界のM&Aや事業承継は、会社の規模や地域、承継スキームなどによって最適な進め方が異なります。検討を始めたばかりの段階でも問題ありません。
『自社の場合はどう考えるべきか』『今すぐ動くべきか、それとも準備期間を設けるべきか』など、状況整理から丁寧にサポートいたします。
警備業界に特化したアドバイザーが、経営者の意思決定を中立的な立場でお手伝いします。
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